十月第二日曜日、御神輿は、東廻り(田の口、唐琴)と西廻り(下の町、上の町)を一年交代で巡幸します。お旅所は東は唐琴、西は上の町。お神輿は発輿祭のあと、鴻八幡宮を出発。雅楽を奏でる先導車に続いて、振太鼓、社名旗、錦旗、鉾、大榊が続き、その後に台車に乗った金色のお神輿が白い法被を着た児童により曳かれます。お神輿の後に、宮司、総代、世話役が続きます。


 氏子区域内を巡航しそれぞれのお旅所に到着したご神幸は、地元氏子の歓迎を受けお旅所にて祭典を催行いたします。多くの地元の人々が参拝に訪れ、二年に一度のお旅所祭の執行を静かに見守ります。


 お旅所祭を終え、正午前に馬場(大鳥居前の参道)に到着したお神輿は、氏子青年会によって大鳥居からの傾斜16度の参道坂道を勢いよく担ぎ上げられ、境内に帰還します。昔は扮装した猿田彦命が露を払い、後ろに「だんじり」が続いてお神輿の御神幸を盛り上げていました。この時に最初に出来ただんじりが「西の傘鉾」と「東の奥」で、御神幸を囃す(はやす)ために祭囃子(まつりばやし)を演奏していました。


 この例大祭に各町内から出される「だんじり」で演奏される祭囃子を「しゃぎり」といい、岡山県重要無形民俗文化財に指定されています。
 各町内を出発した19台のだんじりは、色とりどりの短冊を吊るされた笹竹で飾られ、威勢の良い祭囃子を奏でながら鴻八幡宮の境内を目指します。引き綱は長いもので190メートルにも及び、盛装した人々が掛け声を発しながら引いていきます。


 大鳥居を通り抜け、急斜面に入ってからが各だんじりの見せ場です。次々と変わっていく「しゃぎり」の曲にあわせ、上がっては下がり、綱を練りながら境内に入っていきます。参道の両側は観客で埋め尽くされ、各だんじりの見せ場では大きな歓声が上がります。


 境内に入っただんじりは、あらかじめ決められた場所に整列します。多くのだんじりと、各地区の法被を着た人々、化粧をした子供たちで埋め尽くされた境内は、この祭りの風物詩です。
 境内が一杯になるとお宮より遠い順番に境内から下りて行きます。この下りが最後の見せ場です。各だんじりは時間一杯、別れを惜しむように練り続け、大鳥居から退出して行きます。

-参考文献-
「琴浦の祭りとだんじり」 鴻八幡宮祭りばやし保存会編集委員会
「児島風土記」 倉敷の自然をまもる会